Ⅰ. 市況報告
6月は、5月に中国政府より出されたインフレ抑制策の影響を受けて、上旬は鋼材、原料全般にわたり価格が下落した。特に、輸出依存度の高い関東地区では鉄スクラップ価格の下落が他地区と比較し顕著となり、H2価格が5万円を割り込む状況となった。中旬以降、価格は全国的に膠着状態となったが、下旬に入り大手電炉メーカーの建値改定を機に、市中には需給タイト感が表面化してきている。月末には関東地区もH2価格が5万円台を回復したのをはじめ関西地区は5万1千円程度を形成している。
中国、韓国勢のHS、新断等の上級スクラップに対する買意欲は強く、さらに日本の高炉メーカーもCo2削減を目指し、市中からの上級スクラップ購入量を増やしており、H2との価格差が拡大しているのも現在の市況の特徴となっている。
また、世界の粗鋼生産量も大きく伸びており今年は初めて20億トンを記録する可能性も高い。鋼材市況も高値の維持が伝えられ、製鉄メーカーの原料購買意欲は引続き強く、鉄鉱石、鉄スクラップ共に需給が緩む気配は感じられない。
H2が5万円台という歴史的高値を持続しつつ月末を迎えているが、市況は堅調感を保ったまま7月を迎えることが予想される。
Ⅱ. 鉄鋼諸指標
(1)生産・在庫(2021年5月)
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生産・在庫量 |
前月比 |
粗鋼生産 |
8,422 |
+605 |
(うち電炉) |
2,090 |
+54 |
メーカースクラップ在庫※
|
3,176 |
-21 |
小棒生産 |
630 |
-14 |
(単位:千トン ※メーカースクラップ在庫は2021年4月の数値)■資料:日本鉄源協会 |
(2)価格 (2021年6月/月平均価格、東京・中部・関西三地区平均)
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価格 |
前月比 |
異形棒鋼 |
84,000 |
+4,400 |
H形鋼 |
92,700 |
+5,200 |
スクラップ |
46,600 |
+2,500 |
(単位:円)■資料:日本鉄源協会 |
(3)輸出
|
数量 (2021年5月) |
前月比 |
単価 (2021年6月) |
前月比 |
スクラップ |
700 |
-187 |
49,400 |
+800 |
(単位:[数量]千トン/[単価]月平均 東京湾FOB円)■資料:日本鉄源協会 ※価格はヒアリングベースの独自数字 |
(4)世界粗鋼生産
|
生産量 |
前月比 |
2021年5月 |
174,400 |
+4,900 |
(単位:千トン)■資料:世界鉄鋼協会(WSA) |
(5)U.S.A.コンポジット価格
|
価格(U.S.ドル) |
操業率(%) |
2021年5月 |
3週目 |
413.33 |
79.0 |
4週目 |
413.33 |
81.5 |
5週目 |
413.33 |
82.3 |
2021年6月 |
1週目 |
461.67 |
82.6 |
2週目 |
461.67 |
82.9 |
3週目 |
461.67 |
82.7 |
4週目 |
461.67 |
未入電 |
■資料:日本鉄源協会 |
Ⅲ.鉄スクラップ市況
2021年6月末、H2ベース、メーカー炉前価格、実勢値
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月初 |
月末 |
入荷状況 |
見込み |
北海道
| 46.0~47.0 |
46.0~47.0 |
100% |
堅調様子見 |
東北
| 46.0~47.0 |
47.0~48.0 |
100% |
堅調様子見 |
新潟
| 46.0~47.0 |
46.5~47.5 |
100% |
堅調様子見 |
関東
| 48.0~49.0 |
49.0~50.0 |
100% |
堅調様子見 |
中部
| 50.5~51.5 |
50.5~51.5 |
100% |
堅調様子見 |
関西
| 50.0~51.5 |
50.0~51.5 |
100%弱 |
様子見 |
姫路
| 50.0~50.5 |
50.0~51.5 |
100%弱 |
様子見 |
中・四国
| 50.0中心 |
51.0中心 |
100% |
様子見 |
九 州
| 50.0中心 |
50.0中心 |
100%弱 |
様子見 |
(単位:千円)■出所:日刊市况通信社 |